『結制修行』と『首座法戦式』とは

◆『結制』とは

 お釈迦様が居られたインドでは、4月頃から雨期に入ります。そこで、お坊様方はお寺に籠って修行する期間として90日の修行期間を設けておられました。我国の禅宗でも、ご本山ではその習わしを今でも大切にし、修行が続けられております。この修行期間を『結制』或いは『安居(安居)』と言います。「結」は、「結集」の「結」であり、大勢のお坊様が一堂に集まると言う意味を表しております。『制』は仏教の戒律に基づく「制度」に従うと言う事を意味します。大勢のお坊様が一同に集まり、お寺に籠って修行する期間を設ける事という意味になります。
 市中のお寺でも、住職一代の間に必ず一度は、この修行期間(「制中」といいます)を設け、弟子の中から優れた者を一人「首座」に任命し、この修行の筆頭を仰せ付け、90日の制中の修行が行われます。曹洞宗では、こうした儀式を大変重んじており、半年以上の時間を使って、準備が整えられるのです。

◆『首座法戦式』とは

 制中を結ぶ「結制」に当り、修行僧第一座としての「首座」が「堂頭(どうちょう・・・その修行道場の責任者)」に因って選出されます。そして大勢の役職を持たれるご老師方、そして修行僧並びにそのお世話をされるお坊様方が、『入寺式』という儀式を以てお迎えされます。最初に、『土地堂念誦(どぢどうねんじゅ)』と申して、この御寺の境内地を護って下さっている全ての神々佛菩薩に対して、修行期間中の無事と修行成就のご祈祷が行われます。日輪寺は、その縁起が氷川明神社に由来する事から、当日は神職・伶人も入堂し、神仏習合の儀則を以て執り行われます。この神仏習合の儀式は必見です。
その後『本則行茶』と言う儀式が行われます。此度の結制に当たり、お集まり下さる全てのお坊様方に、夫々のお役をお伝えし、更には、修行僧たちの修行の規範をお示しになる儀式です。最後に、禅寺の喫茶の作法に基づいて清らかなお茶が振舞われ、身心を清めて『首座法戦式』に臨まれます。
『首座法戦式』はまさに「法」を「戦わせる」儀式であり、大きな声で禪問答が交されます。お坊様方から、首座は禅問答を掛けられ、その問いに答えて参ります。選ばれた首座の道場第一座の力量が有るか否かが試される重大な儀式です。

◆『解制』とは

 制中に入る事を『入制(にっせい)』と言い、今回日輪寺では令和5年4月15日が「入制日」となります。その後、禁足期間があける7月15日を『解制(かいせい)』と申します。無事、『結制修行』を終えると、首座和尚は「上座(じょうざ)」という位から「座元(ざげん)」と言う位に一つ位階をのぼる事が出来ます。又、堂頭和尚も緋衣(ひえ・・・朱色の衣)を被着する事が許され「和尚」から「大和尚」と呼び名も変ります。